――――昔話の生きる町、岩雫。 東北部の山岳地帯に位置するこの町は 時代の推移にも対応しようとしていた。 まだまだ今昔入り乱れる町だが、実質静かな農村と言っても大差ない。 そんなドがつく田舎に住む少女、鈴原あやか。
彼女は不思議な体質を持っていた。
昼間はそう、女のままなのだが……
夜になると、男になってしまう。
変化には苦痛を伴い、男であることが外へ漏れないよう
夜の間はずっと軟禁状態になる。 それはあやかの心に大きなしこりとなっていた。
――――この体になった原因はなんだろう。
――――どうしたら、この体が治るのだろう。
――――なぜ自分だけがこんな辛い思いをしなければならないのか。
それまで状況を受け入れるだけだったあやかが、
自分と向き合う事を決めた、そんな一夏の物語―――― |